日本の社会保障制度(図1)は、社会保険方式でありながら制度総額の3割を税金に頼り(図2)、更に、人口増加を前提とした賦課方式ですから、少子高齢化を伴う人口減少局面において機能しません(図3)。

図1 社会保障制度(厚生労働省ホームページ)

 

図2 社会保障の給付と負担の現状(厚生労働省ホームページ)

 

図2 社会保障給付費の推移(厚生労働省ホームページ)

 

年間50兆円の不足分(図4)は次世代に転嫁され続け、世代間損得勘定は世代間の不公平性を示しています(図5)。

 

図4 社会保障収支差の推移(NRA)

 

図5 社会保障制度の世代間損得勘定(鈴木亘 学習院大学経済学部)

 

例えば、73歳の人達が自身で支払った社会保障関連費よりも3,780万円多い社会保障費を使う分、13歳の子供達が自身で使う社会保障費よりも3,730万円多い社会保障費を支払うことになります。これは、社会保障制度の一部である国民医療費においても同様で、国民が支払う負担額と保険料とで賄い切れない不足分は、次世代への不公平な転嫁がされ続けています。

日本の医療は世界最高水準に在りますが、当事者の満足度は著しく低いことが知られています。これは、医療費の支払いが国の徴収と再分配を介していること(図6)、当事者間のインフォームドコンセントの確立に関わる法的責任が医療者側だけにあること、等から、当事者と医療との関係性において、患者は庇護的であり医療者は犠牲的であることに起因しているようです。日本の医療保険制度を研究したヒラリーも、日本の医療について、「The Japanese medical care system is maintained by the Saint-like self-sacrifice of medical workers. (日本の医療保険制度は、医療者の聖人的な自己犠牲によって維持されている。)」とレポートしています。

 

図6 医療費の仕組み(添田博充 医療法人社団添田グループ)

 

このような医療を含めた社会保障問題は、いずれ、マクロ経済学的あるいは政治的手法によって対策されるのかもしれません。しかしながら、それによって、医療者の犠牲的な働き方は改善されますが、むしろ国民の庇護性はより強くなることが想像されます。「知らない間に誰かが何とかしてくれる」という感覚を本能的に確信してしまうからです。国民が正しいインフォームドコンセントの上に成り立つ正しい医療を受け、更には、それを次世代に引き継いて行くためには、医療に対する国民の正しい理解が不可欠です。しかしながら、医療は専門性が高い分野であるため、一般国民が正しい知識を得ることは困難です。医療専門書を手にすることはないだろうし、無償で提供されるインターネット上の情報には経済的利益追求性が含まれている可能性が否めません。

故に、本サイトは、臨床事実に対する科学的根拠に基づいた考察を積み上げ、一般国民が正しい医療知識を得る機会となるべく努めて参ります。

皆様におかれましては、先ず、現世代の不努力によって浪費された医療費が次世代へ転嫁されている事実をお知りになり、医療をお受けになる際には、医療説明を良くお聞きになり、医療者の言動を注意深く監視されながら、お受けになった医療を大切にされることを切に願います。

 

参考文献

1 Healthcare Access and Quality Index based on mortality from causes amenable to personal health care in 195 countries and territories, 1990–2015: a novel analysis from the Global Burden of Disease Study 2015, The Lancet Vol390 No.10091, p231-266, July 2017.

2 The Future Health Index:How can connected care help answer the Global health challenge?, NYSE: PHG, AEX: PHIA, https://www.philips.co.jp/content/corporate/ja_JP/about/news/archive/standard/about/news/press/2016/20160609_Philips_medical_challenge.html

3 医療法第1条の4第2項